キャンパス?ハラスメントコラム 2023年度
歌舞伎の名女形坂東玉三郎氏が、将来女形が無くなるかもしれないと述べたという。
江戸時代から続く伝統芸能の第一人者はなぜそのようなことを考えたのだろうか。そこには、「男らしさ?女らしさ」をめぐる昨今の社会通念の変容があった。
たとえば、筆者の小学生時代(昭和40年代)は、男の子は黒、女の子は赤いランドセルが当たり前で、赤いランドセルの男の子や黒いランドセルの女の子はあり得なかった。もしそうした子がいたら、変なおかしな子としていじめの対象になりかねなかった。赤は女らしい色、黒は男らしい色で、男女はそれぞれそうした「らしい」色を身につけるのが当たり前とされていた。
しかし現在は、男はこうあるべき、女はこうあるべきという社会通念が崩れ、男女共に性別に囚われず好きに生きるべきという考え方が主流になりつつあるようだ。こうした社会通念の変容は多岐にわたり、それは人間関係の領域にも及んでいる。
教師と学生、上司と部下、友人、同僚などの関係性において、かつては当たり前とされ受け入れられていたことが、誰かを傷付けたり不快にさせる改善すべき問題とされるようになってきている。人間関係におけるかつての「当たり前」は、今や「非常識」になりかねないのである。「自分にとっての当たり前」が「現在の当たり前」にマッチしているか、時々立ち止まり省みることを心がけたい。
(
キャンパス?ハラスメント対策室員 杉本 肇美)
■その言動は、適切ですか (ニュース専修2024年1月号掲載)
新聞記事や報道されるニュースの中に、不適切な言動が招いていると思わざるを得ない事案?事件が多く散見されます。SNSによる誹謗中傷、教員による児童?生徒への性加害、信仰の自由に関する問題等、重大な人権侵害だといえるでしょう。
ハラスメント(harassment)とは嫌がらせのことをいい、人の嫌がることを言ったりしたりすることです。
親しい間柄であっても、いわゆる上下関係とされるような、教員と学生、先輩と後輩、上司と部下、親と子であっても、すべての人は人として対等であり水平の関係です。互いを尊重し、また尊重されることは、人としての義務であり権利です。指導、教育、コミュニケーションを正しく理解していれば、そこにハラスメントは起こらないのではないでしょうか。
本学においても佐々木重人学長による「ハラスメント防止宣言」がなされています。すべての学生、教職員等が個人として尊重され、快適に学修、教育、労働及び研究する環境を作り、これを保持していくことが何よりも重要であり、構成員の個人としての尊厳を損ね、快適な環境を侵害するキャンパス?ハラスメントは、あってはならない行為だと明言しています。
自分の言動が他者の人生を大きく左右することがあるのだということを常に意識し、悲しい事件や事故を招かないよう、その言動が適切であるかを振り返ってみてください。
( キャンパス?ハラスメント対策室員 古谷野 栄一)
ハラスメントと聞いて、みなさんはどれだけの種類を思い浮かべるでしょうか?アカハラ、パワハラ、セクハラ、モラハラ等々、調べてみると、スメハラ(スメル?ハラスメント)やテクハラ(テクノロジー?ハラスメント)、ハラハラ(ハラスメント?ハラスメント)といった聞きなれない言葉もあり、60種類以上もあると言われているそうです。
よくないことですが、私たちの身近にハラスメントという言葉は浸透しており、これを予防する対策や起きてしまった時の解決方法について、大学や企業などで議論されています。
本学でも2023年1月に佐々木重人学長が「キャンパス?ハラスメント防止宣言」をうたっており、大手企業に続き、昨年4月からは中小企業においてもハラスメント防止対策が義務化されました。
ハラスメントは相手に不快な思いをさせたり、自分の発言や行動が相手にとって不利益になったり、相手に身体的?精神的なダメージを与えるものです。自分にとってそんなつもりはなくても、他の人にも同じような言動を取ったとしても、相手がハラスメントだと感じればそれはハラスメントに該当するのではないでしょうか。かといって、ハラスメントに敏感になりすぎて、人と過剰にコミュニケーションを取らないのも問題です。
人は何を不快と感じるのかを考え、万が一あなたが取った行動が相手からハラスメント行為だと言われたら、反省し、謝って、よく話し合うことが重要です。秋の夜長に、改めてハラスメントについて考えてみませんか?
( キャンパス?ハラスメント対策室員 松延 千絵)
2023年1月に公表された本学の「キャンパス?ハラスメント防止宣言」は、全ての学生や教職員等を個人として尊重し、快適な学修、教育、労働、研究環境を作り維持することを重要視しています。キャンパス?ハラスメント防止啓発活動は、学生や教職員等の個々の目標や大学の使命を果たすための根底を守る活動と捉えると、人体の免疫システムに例えることができそうです。ハラスメントの適切な理解と防止啓発活動は、免疫システムを高めるような役割を果たすことになりますし、快適な学修、教育、労働、及び研究を促進し、キャンパスの健全な環境をサポートする重要な要素になると思います。
一方、過剰にハラスメントに反応してしまうと、コミュニケーションが損なわれる可能性があります。過度な対応は、本来の目的である健全な環境づくりや人間関係の改善に逆効果をもたらすことが考えられます。適切なバランスを保つことが重要であり、過剰にも過小にもならないように、適度な対応と理解が必要になるでしょう。
例えば、ハラスメントに遭遇したら相手にはっきりと言葉と態度で伝えることや信頼できる人に相談することが重要です。また、他の人がハラスメントを受けていると思われる場合には見て見ぬふりをせず、被害にあっている人に声をかけ、キャンパス?ハラスメント対策室に相談してください。
一人一人の意識や心掛け、他者への気配りが、活気あふれるキャンパスと快適な環境を築くことにつながります。
( キャンパス?ハラスメント対策室員 吉川 徹)
■「ハラスメント」に想う(ニュース専修2023年7月号掲載)
「ハラスメント(harassment)」を辞書で引くと、「悩ませること」「迷惑」「嫌がらせ」など思いのほか軽い言葉が並びます。単なる「迷惑」であれば、相手にそれを伝えて状況の改善を図るのがお互いにとってメリットになります。
しかし、こんにち問題とされる「ハラスメント」には、そもそも相手に直接「嫌だ」と言えない状況があります。報復が怖いから、大人気ないと思われるから、自分にも非があるかもしれないからと、我慢したり、気にならないふりをしたりする行為を、受け手が一方的かつ自発的に要請されるのです。
多くの場合、加害者は明確な悪意を持っているわけではありません。むしろ無自覚に自分の価値観を押し付けていることがほとんどでしょう。自分にとって是とすることや取るに足らないことが、相手によっては異なることを想像するのは意外と難しいのです。
大学は仲間意識を持てる人間と新たに出会える場であると同時に、異なる価値観を持つ人間と付き合わざるを得ない社会の一部でもあります。ちょっと違うかも、ちょっと嫌かもと思ったら、自分だけで抱え込まず、友人知人、あるいは相談室などに気軽に相談することをお勧めします。気づかずに誰かを傷つけてしまうのは人の常です。早めに相談することで客観的な視点を得られますし、相手にも変化する機会が与えられます。一方的に我慢を強いられることだけでなく、対話なく不信感だけが一人歩きしてしまうことも憂慮しています。
「ハラスメント(harassment)」を辞書で引くと、「悩ませること」「迷惑」「嫌がらせ」など思いのほか軽い言葉が並びます。単なる「迷惑」であれば、相手にそれを伝えて状況の改善を図るのがお互いにとってメリットになります。
しかし、こんにち問題とされる「ハラスメント」には、そもそも相手に直接「嫌だ」と言えない状況があります。報復が怖いから、大人気ないと思われるから、自分にも非があるかもしれないからと、我慢したり、気にならないふりをしたりする行為を、受け手が一方的かつ自発的に要請されるのです。
多くの場合、加害者は明確な悪意を持っているわけではありません。むしろ無自覚に自分の価値観を押し付けていることがほとんどでしょう。自分にとって是とすることや取るに足らないことが、相手によっては異なることを想像するのは意外と難しいのです。
大学は仲間意識を持てる人間と新たに出会える場であると同時に、異なる価値観を持つ人間と付き合わざるを得ない社会の一部でもあります。ちょっと違うかも、ちょっと嫌かもと思ったら、自分だけで抱え込まず、友人知人、あるいは相談室などに気軽に相談することをお勧めします。気づかずに誰かを傷つけてしまうのは人の常です。早めに相談することで客観的な視点を得られますし、相手にも変化する機会が与えられます。一方的に我慢を強いられることだけでなく、対話なく不信感だけが一人歩きしてしまうことも憂慮しています。
(
キャンパス?ハラスメント対策室員 柴田 隆子)
■キャンパス?ハラスメントを未然に防ぐために(ニュース専修2023年5月号掲載)
学生の頃、言語学の先生から「学問の分野によっては成果が兵器開発に流用されてしまうことがある。しかし、言語学の成果は人を傷つけることはない」といった趣旨の話を何度となく聞かされました。その言葉に背を押されて言語研究の道に進みましたが、国立国語研究所や文化庁国語課で国語施策に携わる中で、研究成果ではなく、研究対象である「ことば」が「凶器」になるという事例に向き合うことになりました。
本学での相談の中には、相手の立場に立って「ことば」を使っていれば防止できたと思われる案件も多く見られます。残念ながら、ここでも「ことば」が「凶器」となった事例を目にすることになりました。
さて、本年1月に学長が発した「キャンパス?ハラスメント防止宣言」にあるとおり、当対策室は、キャンパス?ハラスメントが発生した場合、被害者の救済及び権利の回復等を図りつつ、加害者に対しては厳正に対処していきます。
そして、それ以上に注力すべきことは、キャンパス?ハラスメントの発生を未然に防ぐための啓発活動です。前任の内藤光博室長は、多様化するハラスメントについて、相談体制やハラスメント行為の防止に関するガイドラインの整備に尽力されてきました。今後も、防止?啓発は当室の重要な活動と位置付けられます。
また、相談しやすい環境を維持し続けることも大切です。本学が今年度から運用している「内部通報制度」の中では、新たに学外受付窓口(学外の担当弁護士)を設け、通報?相談しやすい心理的環境を拡大しています。もし、悩んでいるのであれば解決への第一歩は、「相談すること」です。プライバシーは守られます。安心して相談してください。
( キャンパス?ハラスメント対策室長 斎藤 達哉)