2024.03.08 Fri
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【生物科学科】在学生インタビュー「41年ぶりの発見?論文が昆虫専門誌に掲載」

理工学部生物科学科の動物生態学研究室(指導:辻 大和准教授)に所属し、卒業研究でニホンザルが排泄するフンに集まるコガネムシ(糞虫類)の生態について研究を行った成田 歩さん(4年次?福島県福島明成高等学校出身)は、宮城県金華山島での調査過程で変わった糞虫を採集しました。 
成田さん③▲在学生による専門誌への報告は快挙
 採集した虫を昆虫の専門家に同定してもらったところ、この虫は希少種のミヤマダイコクコガネ (Copris pecuarius) であることが分かりました。金華山島では1982年以降採集の記録がなく、実に41年ぶりの大発見となりました。

 成田さんは、この発見を昆虫専門誌「インセクトマップオブ宮城」に「宮城県金華山で41年ぶりに採集されたミヤマダイコクコガネ」として報告しました(2024年1月号)。 学部在学中に貴重な発見をし、報告した成田さんに専門誌掲載までの経緯や金華山での調査の様子などについてインタビューしました。
Q.ミヤマダイコクコガネを初めて採集したのはいつ頃ですか?
2023年5月です。卒業研究のためのトラップに使用するサル糞を採集している時に見つけました。

成田さん①▲ミヤマダイコクコガネ は体長が23mm、わが国では最大クラスの糞虫です
成田さん②▲発見したミヤマダイコクコガネ
(オスにはカブトムシのようなかっこいい角があります)
Q.昆虫専門誌「インセクトマップオブ宮城」に掲載されるまでの経緯を教えてください。
  • 2023年5月 変わった糞虫を採集。
  • 2023年8月および9月 追加で調査を行い、5月の調査と合わせて計6匹の採集に成功。
  • 2023年8月 宮城教育大学の溝田浩二博士に同定を依頼し、ミヤマダイコクコガネであることが判明。
  • 2023年9月 先行研究を調査。1970年代に金華山島での捕獲記録があることを確認。
  • 2023年10月 溝田博士から推薦をいただき、卒業研究と並行して原稿を執筆して投稿。
  • 2024年1月 報告が掲載。

成田さん⑤▲成田さんの論文が掲載された昆虫専門誌
Q.ミヤマダイコクコガネを計6匹採集したそうですが、標本に5匹しかいないのはなぜですか? 
 1匹は死んだ後で体がバラバラになり、標本にできなかったからです。  
 
Q.今回の発見で理解が深まったことを教えてください。  

糞虫は、動物のフンを食べて他の動物や植物と関りあっている昆虫で、生態系において重要な役割を果たしています。 ミヤマダイコクコガネのミヤマは「深山」という意味で、標高の高い山地を好む糞虫です。 近縁種で家畜の糞を好むダイコクコガネは、駆虫剤が含まれているフンを食べるため数を減らしています。  
しかし、今回採取したミヤマダイコクコガネは、主に、国定公園に指定されている金華山の豊かな自然の中で生息している野生動物のフンを食べていたので、駆虫剤や人間の影響が少ない環境で40年以上も生息できたのだと考えます。   あらためて、金華山の豊富な自然は今も昔と変わらず残っているのだなあと感心し、自然環境の保護が生物多様性の維持や生態系のバランスを守ることにつながると確信しました。  

Q. 苦労した点は?  
金華山での調査は、山小屋に泊まり込みで行いました。山小屋での生活は、貴重な体験で本当に楽しかったのですが、ヒルやムカデなどの害虫や、ナメクジ、ネズミなどが多くて少し困りました。  

Q. 4年間で成長したところを教えてください。    
山小屋生活での共同生活など、仲間との交流を通して協調性が高まりました。  
成田さん④▲絵を描くことが得意な成田さん
イラストは成田さんが描いたオオセンチコガネ
将来について
卒業後は、一般企業に就職しますが、将来的には、大好きな絵を描く仕事をしたいと考えています。これからも動物画家を目指して絵を描き続けます。

最後に、石巻専修大学の魅力 を教えてください。
石巻専修大学は演習林があったり、近くには金華山島があったりと、身近なところで野生の動植物の研究ができる大学です。生物科学科の魅力は、理論を実践に結びつけることができる充実したフィールドワークです。現地での調査や観察を通して新しい発見や経験を得ることができます。

成田さん▲卒業研究ポスター発表会ではポスター賞を受賞しました
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